(16巻の中の話になります。16巻を読んでからお読みください)
僕、ジオルド・スティアートの婚約者であるカタリナ・クラエスの行方がわからなくなったという知らせを受けたのは、仕事の出先でのことだった。
本当はすぐにでもカタリナの捜索に加わりたい気持ちだったが、すでに魔法省の方で力を入れて捜索を行っているという情報があがってきていたこと、大事な仕事であったことから、なんとか思い留まった。
しかし、どうしても気になりその後、少しでも手があけば何度も魔法省へ問い合わせてしまったのだが、しばらくして無事にカタリナが見つかり怪我もないようだとわかり深く安堵した。
知らせを聞いてから、残りの仕事を早めに片づけて、すぐにクラエス家へと向かった。
僕がクラエス家に到着したのとほぼ同じタイミングでカタリナを乗せた馬車が到着したのには、運命的なものを感じた。
普段、心がけている優雅さなどかなぐり捨ててカタリナの乗った馬車へ全力で走り、そのドアを開ければ、そこには椅子に寝そべり気持ちよさそうに眠るカタリナの姿があった。
無事だと知らせは受けてもまだ心配だったのだが、こうしてすやすやと眠る可愛らしい顔を見て、やっと大丈夫だったのだと安堵した。
その頬にそっと手をやり、撫でるとふにゃりと笑顔になり、つられて口角が上がる。
「カタリナ、お帰りなさい」
眠る彼女にそう声をかけてみると、瞼が少しだけ開き、ぼんやりした水色の瞳が見えた。そしてカタリナは、
「ただいま」
とほほ笑んで再び瞼を閉じた。
なんだか胸がぐっと熱くなり、そのままカタリナを強く抱きしめた。
「無事に帰ってきてくれて本当によかった」
自然とそんな言葉が口からこぼれ落ちていた。
無事でよかった。こうして戻ってきてくれて本当によかった。
しばらく抱きしめていていたが、よく眠ったままでカタリナはまったく起きる様子がないため、そのままカタリナを自室まで運ぶことにした。
そうしてカタリナを抱き抱えながら歩き出すと、カタリナが愛らしく僕に頬を寄せてきたため、熱い衝動がわきあがってきたが、なんとか耐えた。
僕の婚約者の無自覚な誘惑がきつすぎる。
その後も、押し寄せてくるものになんとか耐えながら、カタリナの部屋へと到着した。
そしてカタリナの普段使っているベッドへ彼女をおろして横たえると、カタリナはそのままごろりと転がって枕に顔をうずめ、また気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
実に気持ちよさそうな寝顔……ただその寝相のせいで足が……足が太もも近くまで見えている……本当に僕の婚約者の無自覚な誘惑がひどい。
僕はなんとか心を無にして必死に別のことを考えながらカタリナの足の上に布団をかけ、逃げるように部屋を出た。
そしてカタリナ付きのメイドにカタリナの今後の予定を聞いて、今日の話をちゃんと聞かせてもらうべく、キースにも協力を仰ぎクラエス家でのお茶会の手配をしてした。
それら諸々を終えて自室へ戻ると、それまであえて考えないようにしていたカタリナのあの姿がまた脳裏に鮮明によみがえってきて、しばらく眠れぬ夜になってしまった。